中国のドリアン需要が急拡大——猛暑と長雨に向き合うマレーシア産地
中国市場で人気が高まるドリアン。その一方で、マレーシアの農園は高温、豪雨、受粉不良、コスト上昇に直面しています。
強い香りと濃厚な味で知られるドリアンは、中国市場の拡大によって国際的な高級果実として存在感を増しています。なかでもマレーシアのMusang KingやBlack Thornは高く評価されています。しかし需要が伸びれば、産地が安定するとは限りません。AP通信が2026年8月に報じた現地取材からは、極端な天候に揺れる農園の姿が見えてきます。
花が咲いても実にならない
マレーシア・パハン州の農園では、2021年の豪雨と洪水で約100本のドリアン樹や機械が被害を受けました。その後も開花期の長雨が続き、受粉不良によって収量が落ちたと報じられています。高温と不規則な降雨は、開花、受粉、着果、病害管理、施肥の効き方まで複数の段階へ影響します。
ドリアンの受粉には夜間に活動する動物も関わります。天候の変化と生息環境の変化が重なると、花が多くても結実が安定しない可能性があります。生産者は人工授粉、排水対策、かん水、樹冠管理などへ追加の費用と労力を投じることになります。
中国市場を巡る競争
中国の大きな需要を巡り、マレーシアはタイやベトナムと競争しています。輸出量だけでなく、完熟果の扱い、冷凍技術、品種ブランド、検疫、輸送時間が競争力を左右します。Musang KingやBlack Thornという名前が価値を持つのは、品種特性に加えて、産地と流通が品質への期待を築いてきたためです。
一方、需要増を見込んだ増植には時間差があります。ドリアンは植えてすぐ収穫できる作物ではなく、成園化するまでの気候リスクと資金負担があります。高値だけを見て面積を増やすと、収穫期に供給過剰となる可能性も考えなければなりません。
日本の栽培にも共通する課題
沖縄などで熱帯果樹を育てる場合も、平均気温の上昇だけで『栽培しやすくなる』とは言い切れません。開花期の雨、台風、冬の低温、夏の高温、排水不良といった極端現象が、平均値以上に大きな影響を与えます。マンゴスチンやコーヒーを含め、年ごとの開花日、雨量、着果数を記録することが重要です。
ドリアンブームの裏側にあるのは、華やかな市場と、長い年月をかけて一本の樹を管理する農家のリスクです。品種の味だけでなく、気候、受粉、輸送、市場まで見てこそ、果実の本当の価値が見えてきます。
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